地域包括ケア学・老年看護学研究室

研究紹介

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当研究室では、学術及び政策に寄与する厚生労働省や文部科学省の複数の研究プロジェクトに着手し、超高齢社会における地域包括ケアシステム構築に向けた看護のエビデンス化を目指した研究を重ねてきています。そのために多分野の研究者と国内外問わず、連携をとり進めています。

研究の概要紹介

そのために、主に2つの視点からの研究を進めています。

1. テクノロジーで個別ケアの充実を図る

○センシング技術を用いた患者の状態推定技術と最適ケアモデルの開発

看護はこころを扱う分野だと思う人も多いですが、心はどこにあるのでしょうか。古代ギリシャの哲学者アリストテレスは心臓にあるとし、医学の祖であるヒポクラテスは脳だといいました。脳=心というわけではありませんが、脳を基盤として心のありようが身体状況と関わり合いながらあるものと思います。そこで、患者の身体が語る現象をテクノロジーを使って明らかにし、それによって最適なケアを構築しようという先進的な研究をしています。

主なテーマ

  • 効果的な睡眠の同定
  • 睡眠を阻害する要因の同定
  • 患者のストレスに影響を与える因子の同定
  • 転倒予防のための患者の行動解析
  • 終末期の快適な療養環境づくり
  • 環境要因が患者に及ぼす影響  など、多数

研究助成金:2018-2020 文部科研基盤B「科学技術と実践情報を統合した高齢者の早期問題予測ツールと最適ケアモデルの開発」 (研究代表者 福井小紀子、研究分担者 山川みやえ、樋口明里)

また、この研究は、大阪大学ダイキン情報科学研究ユニット(Di-CHiLD)の一つとして実施しています。この研究ユニットの中野23課題の内、医療系では唯一当研究室の課題が採択されました。
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○VR(Virtual Reality)を用いた認知症看護の教育ツールの開発

高齢者や認知症者の立場を仮想体験することによって、より対象者に寄り添える教育プログラムを目指しています。この研究も企業と共に共同開発しています。 詳しくはこちら

研究助成金:2018年度 株式会社シルバーウッド共同研究「VRを活用した看護教育プログラムの作成と評価に関する研究」(研究代表者 山川みやえ)

○認知症診療に関する外来看護教育プログラムの開発

認知症と初めて向き合うのは、診断がつく医療機関である場合がほとんどです。現在のところ、早期発見・早期絶望になっている認知症診療の一つのポイントは、その中で、いかにして進行するなかでも個々の生活がうまく保たれるかにかかっています。そこで、認知症診療の補助をする立場の外来看護師の役割は大きいと思われます。本研究では、外来看護師の認知症ケアにおける生活支援力をさらに高めるための研究を実施します。

研究助成金:2017年度看保連研究助成金「認知症ケアにおける外来看護師の効果的介入ガイドラインの策定に関する研究」(研究代表者 酒井郁子 分担者 山川みやえ 他)

2. ビッグデータの活用で医療介護連携をうながす

世の中には、健診結果データ、医療介護報酬のレセプトデータ、ウェブを活用したログデータなど、実に様々なデータがあります。そこで、それらのデータから、地域包括ケアを強烈に推進するエビデンスを生み出すために、行政機関や企業など連携し、研究を実施しています。

○医療介護連携に関する研究

超高齢社会において、医療と介護のより一層の連携強化は不可欠です。これから急増する在宅や施設の療養者の療養を質高く支えるために、「医療と介護の連携」や「地域連携」や「看看連携」の在り方をマニュアル化し、その効果を示す研究を行っています。
2018年度では、大阪府からの依頼を受け、在宅ケアにおける医療介護連携を促進する取り組みを実施しています。

研究助成金:
2018-2019 厚労科研「在宅医療・介護連携の質に関する評価ツールの開発と検証(30110101)」(研究代表者 福井小紀子)
2018-2020 文部科研基盤C「訪問看護と介護の連携促進のための慢性疾患高齢者向け早期生活マネジメント指針の開発」(研究分担者 福井小紀子)
2014-2016 文部科研基盤B「域終末期ケアを支える医療と介護の連携促進プログラムの開発と有効性の検討」(研究代表者 福井小紀子)
2011-2013 文部科研基盤B「地域終末期ケア体制の充実に向けた看護師主導型の多職種連携ツールの作成と効果の検証」(研究代表者 福井小紀子)

○終末期患者の意思決定を支える地域包括的支援に関する多施設介入研究

終末期患者と家族のQOL向上と看護の有効性をエビデンス化することを目指し、診断・治療・退院・看取りまで、場の移行を含む地域全体での支援の在り方を見える化し、その効果を示す研究を行っています。

研究助成金:
2018-2020 文部科研基盤B「がん末期患者と家族への専門看護師主導型地域包括ケアプログラムの臨床的有用性の検証」 (研究分担者 福井小紀子)
2015-2017 厚労科研「地域包括緩和ケアプログラムを活用したがん医療における地域連携推進に関する研究」(研究分担者 福井小紀子)

○在宅や施設におけるケア評価とITシステム構築に関する研究

在宅や施設でのケアの実践把握や質評価指標の作成、そしてこれらをデータ収集するITシステムの構築を行い、場を超えた継続的なケア情報やコスト情報の統合・分析を行う研究に取り組んでいます。

研究助成金:
2018-2020 文部科研挑戦的研究萌芽「Long-term careアウトカム質指標の開発:施設・在宅横断型指標の構築」 (研究分担者 福井小紀子)
2016-2017 文部科研挑戦的萌芽研究「看取りを支える訪問看護の質指標の作成とITシステム構築に関する研究」(研究代表者 福井小紀子)
2016 厚生労働省老人保健健康増進等事業「訪問看護のケア実態及び必要性に関する調査研究事業」(委員長 福井小紀子)
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2017 厚生労働省老人保健健康増進等事業「高齢者施設等と訪問看護事業所との連携の実態及び看護の提供に関する調査研究事業」 (委員長 福井小紀子)
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2017 厚生労働省老人保健事業推進費等補助金事業「ケアマネジャーの資質の向上のための方策等に関する調査研究事業」(委員長 福井小紀子)
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〇転倒予防に関する研究

転倒予防の研究は山のようにありますが、転倒しやすい人の特徴などを示しただけで、実際にどのような時に転倒しやすいのか、その直接的な原因は不明のまま、患者の行動を制限するケアがなされています。本研究では、実際の転倒の関連因子を直接的に測定することや患者側の心理的な要因などにも着目し、包括的な状況を捉えて効果的なスタッフへの教育プログラムを開発します。

研究助成金:2017-2018 文部科研研究活動スタート支援「実測値を用いた患者の転倒予防のための看護師向け教育プログラムの開発と効果の検証」 (研究代表者 樋口明里)

○超高齢社会の認知症の諸問題を解決できるネットワークシステムの構築による「健康自律」をうながす社会学習の促進の研究(コンソーシアムの構築)

認知症者ができるだけ長く在宅で暮らすには、以下2つの要素が重要です。

  1. 認知症者本人を中心として家族介護者や在宅支援に従事するスタッフが同じ目標をもち、病気を理解しながら認知症者と家族の日常生活全体に対する初期からのコンサルテーションを含む適切な個別サポートによる認知症の当事者(本人、家族)が自分で療養生活をマネジメントできる能力(これを「健康自律」とする)を持つこと
  2. 地域社会で認知症の理解を深め、誰でもなりえる病気として、地域住民が身近に感じ、認知症に関する偏見をなくすための住民の社会学習と地域での見守り合いの地域ぐるみのサポート

本研究では、コンソーシアムに発展させるため、まずは、認知症を基軸としたあんしんサポート学習の大型コンソーシアムの構築のための学習ツールのコンテンツを多領域で拡大するためのネットワークづくりも含むメディア戦略とアプリの開発計画の明確化をします。さらに、認知症個別サポートとしての仮想コンサルテーション機能の開発コンソーシアムの構築のためのデータ集積を目指しています。

研究助成金:
2018年度 大阪大学Innovation Bridge グラント大型産学共創コンソーシアム組成支援プログラム「超高齢社会の認知症の諸問題を解決できるネットワークシステムの構築による「健康自律」をうながす社会学習の促進」(研究代表者 山川みやえ)
2017-2019 文部科研挑戦的研究萌芽「 在宅認知症者の排泄ケア支援アセスメントツールの開発と排泄ケアのアウトリーチの促進」 (研究代表者 山川みやえ)
2015-2019 文部科研基盤研究B「在宅認知症ケアを促進する包括的日常生活サマリー付参加型問題共有データベースの開発」 (研究代表者 山川みやえ)
2011-2014 文部科研若手研究B「通所サービスにおけるケアスタッフ向けの若年性認知症ケアサポートデータベースの開発」(研究代表者 山川みやえ)